Social Development Specialist
Global Link Management
過去数十年間の統計数字を見てみると、日本や世界の平均気温は確かに上昇しています。そして、もちろん大気中のCO2濃度も。だけど、両者の関係性は、人によって言い分が異なります。CO2が気温上昇の主要因である、という言説については、必ずしも合意があるわけではありません。(僕は、この議論がかなり政治性を帯びていると感じています)。とはいえ、途上国の開発援助に携わる我々森林業界関係者が、CO2濃度の上昇こそが地球温暖化の主要因であるという言説を前提とした活動を余儀なくされつつあるのは事実。そう、『REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減)』と呼ばれている考え方が森林・林業分野における開発援助のあり方に大鉈を振るっている、という話です。
『REDD+』について、もう少し詳しく見てみます。これまで、森林・林業分野の援助と言えば技術協力が中心でした。つまり、先進国の援助組織は、具体的な個別課題(例えば、森林火災予防だとか、荒廃地の生態系回復だとか、国立公園管理の能力強化だとか、植林だとか)を扱ってきました。ところが、『REDD+』は全然考え方が違って、対象地域や対象国の森林減少と劣化を防ぐのが主目的だから、具体的な活動は、対象地域・国によって全く異なるのです。ある地域では森林火災予防が重要だし、別のある地域ではプランテーション開発を抑えることが重要だったりする。そして、対象地域での森林減少が防止されたとしても(例えば、プランテーション開発による森林破壊が抑えられたとしても)、その部分が他の地域に移転されたらダメなのです(つまり、別な森林地域でプランテーション開発が行われてしまってはダメということです)。だから、我々は広く面的に森林減少・劣化が止まるような方策を考えなければなりません。
これって、すごいことなのです。だって、今までは、森林火災の予防活動さえ実施していれば良かったプロジェクトが、REDD+の文脈におかれると、それでは許されなくなるのです。プランテーション開発、道路開発、鉱山開発、違法伐採などなど、対象地域で起きている(または、今後起こりそうな)ありとあらゆる森林減少・劣化の原因を直視し、対策を立てる必要性に迫られるのですから。
先日、インドネシアに行ったとき、ここ5年ほど一緒に活動している自然保護分野の友人がREDD+プロジェクトのマネージャーをしていたので、どんな塩梅か話を聞いてきました。そしたら、いま一生懸命に取り組んでいるのは、油ヤシ農園を経営する企業と、農園開発許可を出す地方行政に対する啓蒙活動だと言うではありませんか。インドネシアにおける森林減少の最大の要因は、油ヤシ農園への転換だと言われているから、この問題に取り組むことは森林関係者にとって極めて重要なことなのだけれど、これまで、我々業界人はこの問題に直接は携わって来ませんでした。だって、止めることは極めて困難だし、介入すること自体が政治的に微妙な問題だから。でも、REDD+の導入で状況は一変。油ヤシ農園への転換を抑えることで(すなわち、森林減少を未然に防ぐことで)、将来のCO2排出が抑制されたと見做され、先進国から莫大な資金調達が可能となるのです!だから、投資家を含め、様々なアクターがこの問題へのアプローチを始めています。もちろん、油ヤシ農園への転換を抑えることは簡単ではないですよ。表面的にはREDD+を進めようとしている政府だって、その実、農園開発を進める動きに加担していたりするのですから。それでも、少なくとも表面的には、政府を含め、油ヤシ農園への転換問題に取り組むことが重要だと広く共有されるようになりました。そして具体的な取り組みも始まっています。これはね、開発援助の現場という観点から見るならば、地殻変動的なことです。今後は、もはや、油ヤシ農園問題は難しいから避けて通る、なんて言い逃れは通用しなくなるでしょう。許されない!気候変動対策への取り組みは、確かに業界の常識を変えつつあるのです。
(特活)ジーエルエム・インスティチュート Newsletter 2011年8月/第26号より転載
GLMの外部サポーターとして、今回のコラムを担当させていただくライフスタイルプロデュースの荻野です。
現在GLMでは、会社としてのミッション、ビジョンを再構築しております。国内企業における社会開発分野のパイオニアとして、日本の開発領域をリードしてきたGLMですが、世の中の変化をいち早く受け入れ、会社としても、社員としても、さらに進化を遂げようと社内にタスクフォースチーム立ち上げ、社内を改革中なのです。
わたしは外部コンサルタントとして、ファシリテーターや改革プログラムのデザインをつとめ、経営者のみならずなるべく多くの社員が関わり、自分自身や同僚たちの強みや価値観の理解、チームビルディングワーク、経営者の創業の想いや創業からこれまでの会社のモノガタリの共有、などを行ってきました。
ミッション、ビジョンの策定については.多くの社員が自らの意見を出し、話し合い、お互いのアイディアを理解しながら、それらのアイディアを集約するために、普段は世界中を飛び回っている社員たちが、東京青山に集まり、1日ワークショップを開催しました。ワールドカフェと呼ばれる話し合いの手法を採用し、3グループに分かれて、ミッション、ビジョンについての検討を行っていきましたが、最後の各グループ発表では、同じような方向性のミッション、ビジョンの言葉がアウトプットされ、その場の一体感が一気に高まりました。
できるだけ多くの関係者が集まり、組織と人の強みや価値観を理解しながら、自分たちの課題や未来について、ダイアログ等を通じて話し合っていく手法は、「ホールシステムアプローチ」と呼ばれています。先のワールドカフェという話し合いの手法もその一つであり、この数年で世界各国の先進的な行政や企業、NPOでも、取り入れはじめております。日本でも感度の高い企業やNPOが組織変革や多くのメンバーが関わる問題での合意形成のための手段として、採用しだしており、今後も徐々に日本の企業、NPO、行政の分野でも広まっていくでしょう。
リーダーや一部の代表者により、議論がされ、トップダウンで方向性を示し、強いリーダーシップによって導いていく方法もある局面によっては、もちろん重要ですが、できるだけ多くの関係者が一同に会し、場の一体感を大事にしながら、意見を出し、お互いを理解し合いながら、合意形成を図っていくこともより重要だと考えられています。なぜならば、それらのプロセスによって、それぞれが自律的に、かつ自らの内発的動機とコミットメントによって、同じ方向に進んでいくができるようになるからです。
わたしのような企業のコンサルタントも、GLMのような社会開発のコンサルタントも、分野は違いますが、コンサルタントという職業は、現場に入り込んだら、問題解決、組織変革といった目的、目標のために、アウトプットをし続ける職業です。そのためには常日頃からの質の高いインプットが重要となります。ホールシステムアプローチのような世界の最先端の現場で採用されている手法を感度高くインプットしながら、進化し続けていこうとするGLMの姿勢は、やはり、この分野のパイオニアたるDNAを感じさせます。わたし自身伴走をさせてもらいながら、今後のGLMの進化が楽しみです。

1日ワークショップのひとこま
